研究概要 |
ヒト胎盤シアリダーゼの活性発現に重要な係わりを持つと考えられている分子量46kDa蛋白について、そのcDNAクローニング及び構造解析を行った。ヒト胎盤cDNAライブラリー(λgtll)より、抗46kDa蛋白抗体及び46kDa蛋白のペプチド断片のアミノ酸配列を指標に合成したオリゴヌクレオチドをプローブとしてcDNAライブラリーのスクリーニングを行った。得られた全長cDNAは358個のアミノ酸をコードし、N末端側に17個のシグナルペプチドを持つことがわかった。しかしながら、ホモロジーリサーチによりこのアミノ酸配列はヒト及び酵母α-ガラクトシダーゼに高い相同性を持つことがわかり、更に検討した結果、46kDa蛋白はα-ガラクトシダーゼBとも呼ばれているα-N-アセチルガラクトサミニダーゼであることを明らかにした(Biochem.Biophys.Res.Commun.,163,1498(1989))。次にこの46kDa蛋白のcDNAをCOS細胞にトランスフェクトさせたところ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ活性の発現が確認され、46kDa蛋白がα-N-アセチルガラクトサミニダーゼであることを実証した(Biochem.Biophys.Res.Commun.,170,231(1990)、Nucleic Acid Res.,19,2518(1991))。 一方、シアリダーゼの活性化機構について検討を行ったところ、シアリダーゼの活性化がプロテアーゼの一種アマスタチンによって特異的に阻害されることを見いだした。用いたシアリダーゼの部分精製標品にはアミノペプチダーゼ活性が存在し、これはアマスタチンにより阻害された。これらの結果は、シアリダーゼの活性化がプロテアーゼの機能と何らかの係わりを示すものであり、現在その詳細について更に検討を行っている。 更にまた、最近カナダのグループにより、ヒト胎盤シアリダーゼとして60kDa蛋白の存在が示され、更に糖脂質代謝に関与する活性化因子との係わりを示唆する報告がなされたことから、この点について検討を行った。その結果、60kDa蛋白ではなく、イムノグロブリンGであることを明らかにし、彼らの誤りを指摘した(Biochem.Biophys.Res.Commun.,177,1211(1991))。
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