研究概要 |
1.ラットの腎皮質よりカリクレイン前駆体の活性化に関与する酵素の一種(Activator l)を精製した。本活性化酵素は分子量57,000の糖タンパク性チオ-ルプロテア-ゼであり,本酵素によるカリクレイン前駆体の活性化は,pH4.5で最大反応を示した。また,Activator lに対するウサギ抗血清を作製し,ウェスタンブロッティング法によりその組織分布を調べたところ,本活性化酵素は腎皮質に多く存在するが,顎下腺にもごく微量存在することを認めた。 2.ラット尿カリクレイン及びActivator lに対する抗血清を用いて,腎臓における組織カリクレインとActivator lの局在を免疫組織化学的手法により調べた。その結果,Activator lはカリクレインと同様に,遠位尿細管細胞に存在することを認めた。 3.ラット尿より腎由来の組織カリクレイン及びその前駆体を精製し,それぞれのN末端側アミノ酸配列を自動エドマン分解法により分析した。その結果,カリクレイン及びカリクレイン前駆体ともにN末端から25残基のアミノ酸が同定され,カリクレイン前駆体の8残基目からの配列はカリクレインのN末端からのアミノ酸配列に一致した。したがって,カリクレイン前駆体は7残基のアミノ酸からなるプロペプチドをカリクレインのN末端に有していることが明らかになった。さらに,カリクレイン前駆体はプロテア-ゼの作用によりプロペプチドを遊離し,カリクレインに転換することが判明した。
|