研究概要 |
培養血管内皮細胞の機能発現に及ぼす細胞外基質の影響を検討した。1.まず臍帯由来内皮細胞を20%牛胎児血清存在下で検討した。ラミニン,V型コラ-ゲンおよびエラスチンは細胞接着を抑制した。フィブロネクチン,I,III,およびIV型コラ-ゲンはほとんど影響しなかった。細胞増殖に対しては,フィブロネクチンとI型コラ-ゲンは促進したが,エラスチンは抑制した。ラミニン,III,およびIV型コラ-ゲンの影響は観察されなかった。ところが,V型コラ-ゲンを基質として用いた時,内皮細胞は基質面から剥離した。2.有血清下では血清中のフィブロネクチンの影響を受けて細胞外基質の効果が修飾されている可能性がある。そこで,血清(フィブロネクチン)の影響が無視出来る条件を開発した。この条件下で,血管内皮細胞は,フィブロネクチンとI型コラ-ゲンは細胞接着を促進し,20%血清並の細胞増殖を示した。ところが,V型コラ-ゲン上では,内皮細胞は培養時間の経過とともに基質面から剥離し,細胞増殖は観察されなかった。この時接着細胞の細胞内Fーアクチンは再構成されていないかった。一方,培養液中に離脱した細胞は新たなI型コラ-ゲン上では接着,増殖することが出来た。一方,平滑筋細胞はV型コラ-ゲン上でさえ完全なFーアクチンを形成し,素早く増殖した。あたかもV型コラ-ゲンは内皮細胞に特異的に接着を弱め基質からの脱離を促進している様に見える。このことは生体血管で内皮細胞基底膜直下にV型コラ-ゲンが存在することを併せ考えると,血管におけるV型コラ-ゲンの役割を示唆しているものと思われ興味深い。3.この様に,フィブロネクチンやI型コラ-ゲンを基質とした時,細胞の伸展,増殖は促進されるが,抗血栓作用をもつプロスタサイクリン(PGI2)産生能やアンギオテンシン転換酵素(ACE,昇圧作用を営むアンギオテンシンIIを産生)活性は影響されなかった。
|