研究概要 |
MRSAの感染の疫学調査,特に感染ル-トの解明には個々の分離菌株を「型別」することが要求される。この目的のためにはどの型別法が最も適当なのかを知ることを目標として,由来の明らかなMRSA分離株の96株とMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)の12株について, 1)IDテスト SPー18による生物型別,2)15種の化学療法剤に対する感受(耐性)性パタ-ンによる型別,3)パルスフィ-ルド電気泳動(PEGE)によるゲノム型別,4)プラスミドによる型別,5)ファ-ジ型別,6)コアグラ-ゼ型別を行って,それらの有用性を検討した。 その結果,PFGEではSmaI消化標品の泳動パタ-ンで14種に型別されたが,MRSAの83%は1型か2型(それぞれの型で数種の亜型あり)に属した。プラスミドはMRSAの2株とMSSAの1株を除いて,供試の98%の株に1種,またはそれ以上の種類の存在が認められ,分子サイズも1.0kb〜40kbと広範囲にわたったが,特に93%のMRSAに24.3kbの1種の共通したプラスミドの保持が確認された。生物型は乳糖と白糖の利用様式から4種の型に大別されたが,この型別法も限られた範囲で有用である。ファ-ジ型別ではMRSAは10%の株がいずれかの型別ファ-ジ(複数)に感受性を示したのみであり,コアグラ-ゼ型別ではI型からVIII型のうち,98%の株がII型に属した。 以上の知見から,MRSA感染の疫学調査のマ-カ-としては,PFGEによるゲノム解析(SmaI消化DNA),プラスミドDNA解析(特に20kb以上の分子サイズのもの),およびIDテストのSPー18による生化学的性状による型別の成績を組合せたものが,現在では最も正確であると結論された
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