研究概要 |
螢光標識のフィブリノゲン(Fbg)を用い血小板へのFbg結合のフロ-サイトメトリ-による測定法を確立した。本測定法は,アイソト-プ標識Fbgを用いる方法との相関も良く,簡便に経時変化を追える点で優れていた。この方法を用いた検討では,未刺激血小板にはFbgの結合はみられなかったが,トロンビンン刺激により濃度依存性にFbg結合が認められ,furaー2法により測定した細胞質遊離Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)の増加と平行した。細胞外液のCa^<2+>をキレ-トしたり,GPIIb/IIIaに対するモノクロ-ナル抗体により結合が抑制されたことから,その螢光標識FbgはCa^<2+>依存性にGPIIb/IIIaに結合するものと考えられた。BAPTAを細胞内に導入して細胞内のCa^<2+>をキレ-トするとFbg結合は濃度依存性に抑制された。また血小板cAMPを増加させ,トロンビン刺激後のIP_3産生を抑制して[Ca^<2+>]iの増加を抑える濃度のforskolinは,血小板へのFbg結合を抑制した。 次に刺激血小板表面へのGMPー140発現をフロ-サイメトリ-にて測定した。未刺激血小板でのGMPー140の発現は3%以下であったが,トロンビン刺激により経時的にGMPー140の発現は増加した。このGMPー140の発現は,細胞外Ca^<2+>を除いても影響を受けなかったが,BAPTAの細胞内導入あるいはforskolinの添加により抑制された。トロンビン刺激による血小板へのFbg結合とGMPー140の発現をフロ-サイトメトリ-により同時測定すると,血小板へのFbg結合が先におこり,引き続きGMPー140の発現がみられた。細胞外Ca^<2+>の除去では主としてFbg結合が抑制されたが,BAPTAの細胞内導入,forskolinの添加により,両者とも平行して抑制された。ネフロ-ゼ症候群では,トロンビン刺激後の[Ca^<2+>]iの増加およびFbg結合はともに亢進していた。 以上の結果から,血小板へのFbg結合は刺激後の細胞内Ca^<2+>の増加と密接に関連していると考えられた。
|