研究概要 |
尿中ヘモグロビン(Hb)の新しい病態検査上の意義を明らかにすることを最終目標に,新しいHb精製法を確立,ポリクロナ-ル抗体(ウサギ)の作製を経て,定性法としてラテックス凝集反応法,定量法としてラジオイムノアッセイ(RIA)法二抗体法を樹立,応分の成果をあげた。 Hbの精製法はこれまでの研究法を基礎に,等電点電気泳動法により精製品を得た。すなわち,ヒト赤血球を蒸留水および半量のトルエンで溶血させた後,洗〓Hb粗分画を得て,pH勾配6ー8,ショ糖密度勾配5ー50%の条件で等電点電気泳動を行ないpH7.02ー7.08のメインピ-クに出現したHbA_0を分取,免疫原,標準物質として使用した。 ウサギ抗体の作製は既に確立された方法による。 ラテックス凝集反応法は用手法による定性法で,ラテックス(0.5μm)に抗体を感作したもので,感度は約150ng/mlで,無希釈尿10aulに等量のラテックス液を加えて混合,3分後に凝集の有無,程度から尿中のHbを定性する。この定性法では,正常成人では陰性であるが,患者尿では、従来法である試験紙法とよく分析結果が一致し,その高感度特性から,試験紙法が陰性であっても陽性を示すものがあり,病的状態を捕らえている可能性も示唆された。 そこで,新たにRIA法を確立してより詳細に病態の把握を試みた。システムは二抗体法サンドイッチ法で,測定感度は約5〜10ng/ml,標準品を用いた同時再現性はおおむね良好な結果を得たが,尿サンプル中での精度,再現性,希釈反応直線性はヘモグロビンの不安定性からきわめて不良で,微量正確測定は現段階では不可能となっている。予備的に研究では確かに病的状態において異常を捕えており,今後,Hb尿中不安定性の解決が大きな課題として残されている。
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