研究概要 |
高コレステロ-ル血症は粥状動脈硬化症の成因の中でも最も重大と考えられている。LDLレセプタ-を介するコレステロ-ル代謝の他に,カイロミクロンレセプタ-あるいはアポEレセプタ-を介するコレステロ-ル代謝経路が想定されている。このレセプタ-はアポEを有するリポ蛋白を特異的に認識して,そのリポ蛋白の利用に重要な機能を果している。私共は従来より,アポEを多く有するリポ蛋白がLDLレセプタ-以外の経路により処理されうることを示し,本研究においてそのレセプタ-を蛋白レベルで同定しようと考えた。ラットあるいはウサギ肝よりレセプトゾ-ムを分離して,このレセプトゾ-ムの対するリポ蛋白の結合を検討した。アポEの多いリポ蛋白は通常のリポ蛋白に比較して約2〜3倍,結合量,親和性共に増加していた。リガンドプロッティングにより,LDLレセプタ-とは別に分子量580KDaの蛋白にアポEの多いリポ蛋白との結合をみとめた。最近,米国よりアポEレセプタ-として580KDaのLDLレセプタ-関連蛋白(LRP)が報告されているが,私共の研究と一致する。また,α_2マクログロブリンレセプタ-とアポEレセプタ-が同一であることが示されているが,これはアポEレセプタ-の機能と調節を考える上で大変示唆に富んでいる。私共は,Manocytocolony stimulating factor(MーCSF)が血中コレステロ-ル値を低下させることを見出したが,この低下作用の一部はアポEレセプタ-の増加に基くことを示している。すなわちMーCSFのtarget orgauにおけるアポEレセプタ-活性はMーCSFにより上昇し血漿コレステロ-ル値を低下させる。本研究を通じて,コレステロ-ル代謝におけるアポEレセプタ-の存在を示すのみならず,MーCSFの作用を通じてアポEレセプタ-が脂質代謝と免疫系との関係に重要な役割を果していることを示すことができた。
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