研究概要 |
ラット腎乳頭部集合尿細管細胞におけるアルギニンバゾプレシン(AVP)の作用発現に関するカルシウム(Ca^<2+>)とcyclic AMPの役割を検討した。これまで,私たちは同集合尿細管胞においてAVPがV_2レセプタ-を介して細胞内情報伝達物質cyclicAMPと細胞内遊離Ca^<2+>(〔Ca^<2+>〕i)を動員することを明らかにしてきた。今回の研究では、(1)AVPによる〔Ca^<2+>〕i動員に対する endoplasmic reficulum(ER)由来のCa^<2+>について検討するため,Ca^<2+>除法培地,Ca^<2+>膜ブロッカ-,TMBー8,ryanodineおよびcaffeireを用いて実験した。Ca^<2+>除培地下でTMBー8またはERaCa^<2+>channelを開口固定するryanodineやcaffeineで前処置すると,AVPによる〔Ca^<2+>〕i動員は完全に阻害された。また同処置下では,AVPによるcyclicAMP産生も有意に抑制された。同様の成績はCa^<2+>膜ブロッカ-verapamilでも認められた。これは,ER由来のCa^<2+>がAVPによる〔Ca^<2+>〕i動員とともにadenylate活性化にも必須であることを示唆している。(2)AVPによるERからの〔Ca^<2+>〕i動員における細胞内情報伝達係を明らかにするため,イノシト-ルリン脂質の代謝した。10^<ー7>MAVPによる細胞内イノシト-ル3リン酸の増加はみられなかった。AVPによるERからのCa^<2+>遊離はイノシト-ル3リン酸に依存しないと考えられた。(3)Protein kirase c系によるAVPの作用への修飾をpharlol esterおよびprotein kinse C阻害剤Hー7を用いて検討した。細胞をPhoslelー12ーmysistate(PMA)1時間前処置すると,AVPによるcyclicAMP産生および〔Ca^<2+>〕の動員は有意に抑制された。細胞をH7で前処置すると,PMAによる抑制は消失した。また細胞をPMAで20時間前処置すると,PMAによるProte in kirase C 賦活は消失し,PMAによるAVP作用への修飾は発現しなかった。以上の如く,本年度の研究計画に沿って,AVPによる〔Ca^<2+>〕i動員とER由来Ca^<2+の>生理的意義,およびAVPレセプタ-以降の cyclicAMPーA kinase系とC kinase系の相互作用を明らかにした。
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