研究概要 |
本年度は特にAGの体内動態に関して多くの興味ある知見を得た。まず特筆すべき成果は、血中・尿中の精密なAG測定系が確立し、食品分析とヒトにおけるバランス・スタディが完成したことである。これにより、人体中のAGが、おおむね食物中よりの経口摂取(5mg/日前後)に由来したものであること、腎の排泄閾値を越えた余剰分5mg/日が尿中に排泄される形で体内プ-ルが均衡を保っていることが判明した。通常の食事条件においては、この均衡に大きな変化は見られないが、経管栄養時においては糖代謝状態とは関係なく、以上のバランスが大きく崩れる可能性が示唆された。また様々な動植物中のAG測定の結果より、AGは特にマメ科の植物に多く、また穀類系の植物にも比較的多いことが判明した。特にマメ類においては光合成の盛んな時期に一致して含有が増大することが示された。なお哺乳類、鳥類、魚類、甲穀類の間で体内含量に有意差はなく、この間における進化論的な差異は認められなかった。 ラット尾静脈より持続微量注入ポンプを用いてglucose,AG,galactose,xylose,mannose,myoinositol等を過剰投与し、尿中に排泄された各種糖類をGC/MSを用いて測定した。結果AG排泄へのgalactose,xyloseの影響は少なく、これらの糖特異的輸送担体とはあまり干渉し合わないことが判明した。これ以外の糖に関しては現在なお知見集積中であるが、腎の糖輸送系が意外に特異性が強いことが示唆されている。 一方、ラット脂肪細胞,Kー562ヒト赤白血病系細胞等を用いたin vitroの実験で、AGはごく微量ではあるが迅速にとり込まれること、解糖系にはほとんど流入しないことなどが判明した。また核酸代謝系への影響も見られなかった。以上の結果より、腎尿細管ではAGの2の位置のOH基が、その他の一般の細胞では3の位置のOH基が、AG転送の鍵となっていることが示唆された。
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