研究概要 |
[目的]血中成長ホルモン結合蛋白(GHBP)が成長ホルモン(GH)受容体の一部であることから抗GH受容体抗体を用いる血中GHBPを測定する方法を開発し,低身長を含め種々の病態での血中GHBPについて検討した。[方法] ^<125>IーhGHと血清をインキュベ-トし, ^<125>IーhGHに結合したGHBPを抗GH受容体抗体で免疫沈降させた。[結果及び考察]抗GH受容体抗体で免疫沈降された ^<125>IーhGHとGHBPとの結合は温度,時間,濃度依存性であり,非標識hGHにより濃度依存性に抑制された。末端肥大症では ^<125>IーhGHとGHBPとの結合は健常人に比べて低く,GH分泌不全症ではやや高値を示した。これらの成績はGHがGH受容体を調節しているように血中GHBPもGHにより調節されていると考えられた。又,妊婦(後期)では高値を,肝硬変症,低栄養状態では低値を示した。低身長者の検討ではタ-ナ-症候群12名の血中GHBPは健常小児と差が認めなかった。一方,GH分泌刺激試験に対してGHが10ng/ml以上の増加反応を示した“いわゆる正常低身長者(NSC)"23名では低下しており,正常下限より低値の者は5例認められた。又,NSCでは血中GHBPと血中IGFーIは正の相関が認められた。これらの結果はNSCの中には血中GHBPの低値の者が存在し,これらの症例ではGH受容体の異常が低身長の一因である可能性を示唆した。更に,血中GHが高値で,血中IGFーI,IGFーIIが低値でGH投与により血中IGFーIの増加のみられないGH抵抗性小人症1例では血中GHBPと ^<125>IーhGHとの結合は2.6%と著明に低下し,GH受容体の減少を示唆した。又,腎不全小児では明らかなGHBPの変化は認められかなった。次に,後縦靭帯骨化症(OPLL)の発症にGHの関与を示唆する報告があり,OPLLでの血中GHBPを検討した。OPLLでは血中GHBPが増加しており,OPLLでGH受容体が増加している可能性が考えられた。
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