研究概要 |
止血・血栓形成に密接に関与している組織因子の発現と制御機構につき分子生物学的手法を導入する事により培養白血病細胞,白血病細胞の組織因子mRNAの発現を検討した。組織因子cDNAの同定:Spicerらにより同定された組織因子cDNAマップと組織因子アミノ酸シ-クエンスに基づき45merのオリゴヌクレオチドを合成し、これをプロ-ブとして市販の30merのプロ-ブと併せて、λgt11を用いた胎盤cDNAライブラリ-よりシグナルペプチド部分およびmature protein部分を含む1.2kbのDNA断片をえた。これを標識してプロ-ブとして用いた。細胞RNA抽出:培養白血病細胞HLー60をエンドトキシンにて経時的に刺激した後,細胞RNAをGTC/CsTFAにて抽出し,poly(A)^+ selectionし,アガロ-スゲル電気泳動後,ノ-ザンハイブリダイゼ-ションを行った。2.2kb付近に組織因子mRNAのバンドが同定され、刺激に応じて次第に濃くなり組織因子mRNA発現の増加をうかがわせた。RTーPCR法による組織因子mRNAの解析:組織因子遺伝子マップより組織因子遺伝子のエクソン1から2にまたがる24塩基を5'側プライマ-、エクソン4内の24塩基を3'側プライマ-として合成した。組織因子遺伝子DNA上は、この2つのプライマ-は7kb以上離れているが、cDNA上では410bp断片が増幅出来る筈である。培養白血病細胞HLー60及び急性白血病症例よりGTC/CsTFA法を用いて抽出した総RNA量1ー2μgを3'プライマ-を用いてcDNA合成を行ったのち、5',3'両プライマ-を用いて30サイクルのPCRを施行した。HLー60では,エンドトキシン添加で経時的に組織因子mRNAの発現増加が認められた。また臨床的にDIC症状のあるM3症例では,骨髄および末梢血白血病細胞に組織因子mRNAの発現増加が認められた。DICの認められなかったM1,M4症例では組織因子mRNAの発現は認められなかった。血管内皮細胞については現在RTーPCR法を用いて組織因子mRNA発現を検討中である。
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