研究概要 |
遺伝性溶血貧血の遺伝子治療法の確立を目的として,先ずヒトもしくはマウス血液細胞中への、ヒトL型ピルビン酸キナ-ゼ(PK)cDNAの導入をはかった。すなわち,レトロウィルスベクタ-(pMNSM)DNAにヒトL型PK cDNAを挿入し,LPKレトロウィルスプラスミドpMNーPKLを作製した。次にpMNSMーPKL DNAもしくはpMNSM DNAを各々別に,パッケ-ジング細胞株GP+env Amー12中にリン酸カルシウム法にて導入させた。細胞株はamphotropic細胞株であるが,この細胞株より得られたウィルス液の力価は1×10^4/ml低値であった。そこで、GP+86というecotropic細胞株に各DNAを導入し、それぞれのDNAに対応するecotropic細胞株とamphotropic細胞株を共培養することで,約1×10^6/mlと高力価のウィルス産生細胞株(ヘルパ-細胞)を得ることができた。このヘルパ-細胞染色体には明らかにpMNSMーPKL DNAが組み込まれていた。しかも、ヒトL型PKがmRNAレベルならびに蛋白質のレベルで発現していることが確認できた。次にこのヘルパ-細胞培養上清とNIH3T3細胞、FDCPー2(マウス白血病細胞株),HEL,KU812(ともにヒト白血病細胞株)の各細胞を共培養することで,これらの細胞をレトロウィルスで感染させた。被感染細胞染色体にはやはり,pMNSMーPKL DNAの組み込みがみとめられ、さらにヒトL型PK mRNAの発現がノザン法ならびにRTーPCR法で確認された。現在、マウス骨髄幹細胞(Lyn^ー,cーkit^ー)の濃縮をFACSにておこない,この細胞に上記と同様の方法でPMNSMーPKL DNAを導入し,マウスに骨髄移植を行い、生着した血球細胞中にヒトL型PK mRNAの発現をみとめるか否かを検討中である。この一連の研究結果は、PK異常に伴う遺伝性溶血性貧血の遺伝子治療法確立の為に大変重要な示唆を与えてくれるものである。
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