研究概要 |
骨髄ストロ-マ細胞の研究はこれまで造血支持能という観点から行われてきたが、本研究ではその造血因子産生の生物学的検討した。 1.骨髄ストロ-マ細胞による造血因子産生の生物学的検討。 ヒト骨髄ストロ-マ細胞株(KM102)および初代培養ヒトストロ-マ細胞がILー1,LPS刺激によりGーCSF,ILー6を産生することをNorthern分析と酵素免疫法により確認した。また、in situハブリダイゼ-ション法により初代培養骨髄ストロ-マ細胞では一部のものがILー1,LPS刺激に反応して多量のGーCSFmRNAを発現することが判明した。造血因子の恒常的産生に関しては、マウス骨髄性白血病細胞株NFS60をPA6ストロ-マ細胞株と共培養するとGーCSFおよびILー6の産生が誘導され、骨髄系細胞とストロ-マ細胞の接着の重要性が示唆された。 2.ストロ-マ細胞における造血因子遺伝子発現調節機構に関する検討。 GーCSF,ILー6遺伝子の5'側プロモ-タ-領域を含む塩基配列をCAT遺伝子に連結し、それぞれのプラスミドをKM102細胞に導入し、CATアッセイによりプロモ-タ-活性を調べた。その結果,ILー1刺激でCAT活性の強い誘導が認められ、ILー1は転写レベルでGーCSF,ILー6の産生を亢進させることが判明した。次に,GーC5FcDNA 3'非翻訳領域にあるATーrich塩基配列をpRSVCATのCAT遺伝子3'非翻訳領域に挿入し,KM102細胞への導入実験によりこのATーrich塩基配列の役割を調べた。その結果,3'ATーrich塩基配列の存在によりCAT発現が抑制され,ILー1刺激によりCAT活性の部分的回復がみられた。即ち,ILー1がGーCSFmRNAの崩壊過程を抑制したものと考えられる。以上の結果から,ILー1刺激によるストロ-マ細胞からの造血因子産生には、転写および転写後の両方のレベルでの発現調節機構が存在するものと考えられた。
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