研究概要 |
本研究によって次の諸点が明らかとなった。1)単球の殺腫瘍活性の分子メカニズムとして、腫瘍壊死因子(TNF)のほかに活性亜硝酸イオン(NO^-_2)の産性が関与する。 2)MーCSF単独またはエンドトキシン(LPS)単独をマウスに注射しても血中にTNFは検出されないが、MーCSFを注射してから3時間後にLPSを注射すると血中TNFが上昇することからMーCSFはTNFをプライミングする。3)マウスにMーCSFを注射すると16時間目をピ-クにして、血中にTNF耐性白血病細胞L1210に対する殺腫瘍活性が出現して、その活性はNO^-_2と強い結合能を有するミオグロビンを添加することによって完全に阻害された。 4)MーCSFを注射されたマウスの腹腔マクロファ-ジをin vitroで培養すると上清中にNO^-_2が産生されている。以上の結果から単球の殺腫瘍活性はTNFとNO^-_2の生産を介して行われ,MーCSFはTNFのプライミングをすることと,NO^-_2産生を増幅することによって,単球の殺腫瘍活性を亢進することが明らかとなった。つぎにこのようなin vitroの殺腫瘍活性がin vivoでも発輝されるかどうかをみるために,あらかじめマウスにL1210細胞を注射しておいてから2群にわけ、1群には生食のみを他の1群にはMーCSF(500μg/kg)を5日間投与してマウスの生在率を比較すると、生食群では生存率は10%であったがMーCSF群では80%と著しく生存率が上昇することから、MーCSFはin vivoでも殺腫瘍活性を増幅することが明らかとなった。今後この白血病モデルを用いて、MーCSFの至適投与法と有効血中濃度を決定する予定である。
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