研究概要 |
【研究の意義】当研究者が樹立した白血病細胞株は白血病細胞の増殖分化機構の解析に大きく貢献してきた.白血病細胞の特性を解明する過程で白血病細胞の分化誘導現象に着目し,臨床応用を計るため有用物質産生性ハイブリッド細胞樹立に関して基礎的検討を実施した. 【細胞融合法の確立】新たな細胞融合法である高電圧パルス法を導入した.融合装置は島津SSHー1,電極間隔1mm融合チャンバ-を用いた.融合条件を決めるため8ーアザグアニン耐性U937細胞を用い,融合効率に影響を与える,細胞濃度,細胞泳動時間(IT),印加パルス電圧(VDC),パルス回数(n),融合後細胞静置時間(RT),融合行程数(PN)などの条件を検討した.細胞融合効率の最適条件である融合操作後の生細胞率50%付近を得るためには,細胞濃度2.5ー3.0x10^7/ml,IT20sec,VDC250ー300V,n3,RT10min,PN3,が最適であった. 【ハイブリッド細胞の樹立】上記の設定条件を用い,U937および当研究者が樹立した単球性白血病細胞株JOSKーKの8ーアザグアニン耐性株と正常ヒト末梢血単球あるいはリンパ球とを細胞融合させた.融合操作後の生細胞率は,42から60%であった.融合操作後の細胞1x10^4個をヒポキサンチンーアミノプテリンーサイミジン(HAT)を含むメチルセルロ-ス半固形培土に播種し選別したところ,培養開始後14日で,JOSKーKと単球の組み合わせから平均17個,JOSKーKxリンパ球20固,U937x単球5個,U937xリンパ球8個のコロニ-形成が観察された. 【樹立細胞株の特微】形成された個々のコロニ-を液体培養系に移し細胞株を分離した.多くはリンパ球系マ-カ-を有するものであり生理活性物質の産生能を検討中である.一方単球との融合細胞と考えられる細胞は増殖速度が非常に遅く,何らかの細胞増殖抑制機序が存在するものと考えられ,現在癌抑制遺伝子の発現状態,造血抑制因子TGFーβファミリ-の関与について詳細に検索中である.
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