研究概要 |
急性骨髄性白血症に対する化学療法後に正常造血回復促進の目的で遺伝子組替え型ヒト顆粒球コロニ-形成刺激因子(GーCSF)を使用することが有効であろうと考えられるがin vitroでGーCSFは白血病細胞の増殖を刺激することが我々の報告を含め数篇報告されておりその臨床使用には異論がある。GーCSFの急性骨髄性白血病治療における臨床使用の安全性を見きわめるために白血病細胞のGーCSF受容体の有無と白血病コロニ-形成度との関連を検討した。(方法)白血病コロニ-法は白血病患者の末梢血または骨髄から分離した白血病細胞をウシ胎児血清,GーCSFと共に半固形培地の中で培養した。白血病細胞土のGーCSF受容体の測定は標識後も生物学的活性を保持したGーCSFを得るために一部アミノ酸を変換したGーCSFをglucose oxidaseーlactoperoxidase法で標識した。(結果)白血病細胞土のGーCSF受容体は高親和性でかつ一種類であることが判明した。急性白血病症例20例についてみると2例では受容体が検出されなかったが,残る18例でのKd値は15から130PM,平均79PMであり受容体の数は細胞あたり55から1200,平均278個であった。受容体の数を症型別にみるとM2で最も高い値を示したが,病型関に統計学的な差は認めなかった。GーCSF添加にあるコロニ-形成は20例中8例で認められたが,うち5例はM2であった。GーCSFに反応したグル-プの受容体と反応しないグル-プのそれとの間でWilcoxonrnkーsum testを行うと,GーCSFに反応したグル-プに受容体は統計学的に有意に多かった。つまり受容体数の多いものはGーCSFによる増殖度が大きいことを示すと考えられる。この結果からGーCSFの受容体数の多い病例ではGーCSF投与によって白血病細胞の増殖も刺激されやすいことが考えられ,白血病患者にGーCSFを使用する場合受容体数を予め測定し,少ない症例では使用しても白血病細胞増殖の可能性は少ないのではないかと考えられる。
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