研究概要 |
最近の計算機システムの並列化・分散化の急速な進行に伴って。並列プログラムの生産性と信頼性を向上されるための研究がますます重要なものとなっている。本研究では,まず,非同期通信に基づく並列処理言語DNNPを設計し,その言語に対して,表示的意味論に基づく形式的意味記述を与えた。非決定的選択が可能な並列処理言語に形式的意味記述を与えるためには,Brock-Ackermanが指摘した問題点を克服する必要があり,その意味論に関する研究は格段に難しいものとされてきた。今回設計したDNNPでは非決定的選択の他にプロセスの動的生成も可能であり,そのような言語に対して形式的意味を与える研究はさらに難しいものとなるが,本研究においてDNNPのプログラムの意味をある高階関数の最小不動点として定式化することに成功した。このような研究はこれまでほとんど見かけなかったものと思われる。また,本研究では,この表示的意味記述を接続法の概念を用いて,より抽象度の高い,見通しのよいものに改善した。非決定的選択を有する並列処理言語の意味記述に接続法を用いた研究もこれまであまり見かけなかったものであり,本研究において並列処理言語の意味記述に接続法を用いる方法及びその有効性を明らかにした。本研究では,さらに,現在注目を集めているオブジェクト指向と並列性の概念を両立させることが出来るような言語について考察し,DNNPを自然に拡張した並列オブジェクト指向言語DNNOを設計し,この言語に対して表示的意味記述を与えた。この言語はオブジェクト指向言語の特徴をすべて有しているわけではないが,その言語に表示的意味記述を与えることに成功したことは,この分野の研究の今後の発展に役立つものと思われる。さらに,本研究では,並列プログラムの正当性検証に関する基礎研究及び並列処理言語DNNPの実行系作成に関する研究を行ない,幾つかの成果を得た。
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