研究概要 |
本研究は,生物界に広く分布する蛋白質分解酵素の機能を抑止するボ-マン・バ-ク型インヒビタ-蛋白質の構造と機能を研究し,その生物学的役割を解明しようというものである.本インヒビタ-は豆類に多く含まれ,アミノ酸残基数60〜80で,遺伝学的に保存された位置に7個のジスルフィド結合をもっている.分子はそれぞれ活性部位を持つ二つの構造のよく似たドメインからできているが,それぞれはジスルフィド結合によりつくられた3個の縮合した環状構造からできている.現在までに,われわれは小豆のABーIインヒビタ-(アミノ酸残基82個)とトリプシンの複合体の2.3A^^・分解能の解析と,ピ-ナッツのAーIIインヒビタ-(アミノ酸残基70個)単体の低分解能の解析を終了している.本課題ではAーIIインヒビタ-の2.3A^^・分解能の構造精密化を行い,ABーIの構造との比較検討を行い,一方,ピ-ナッツのBーIインヒビタ-(AーIIより,N末端の7個だけ短い)の低分解能解析を行い,有意義な結果を得た.以下に結果を纏める. 1.AーIIの二つの活性部位は一つはアミノ酸残基9個の環(環I)にあり,他方は11個の環(環II)にあるがその立体構造は同じで,非常によく似ている. 2.トリプシンと結合している小豆のABーIインヒビタ-の活性部位を含む環の構造はAーIIの環Iのそれと全く同じである.即ち活性部位の構造がフリ-でも,酵素と結合していても、その部位の構造が全く同じである.結合部位が安定な硬い構造を持っていて,容易には変化しないことを示している.なお複合体の中の結合部位の見かけの熱振動はフリ-のそれより小さく,複合体の結合がより安定であることを示している. 3.BーIはAーIIよりもアミノ酸が7個少ないが,両者の構造には有意な差は見られない.
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