研究概要 |
ビタミンD_2(D_2)はシイタケやヒラタケでは僅かに検出されるものもあるが、エノキタケでは全く検出されなかった。しかし、エルゴステロ-ルはすべてのキノコに多量に含まれ、日光や紫外線照射によって、いずれも多量のD_2が生成された。日光より紫外線の方が多くのD_2が生成された。特に紫外線照射したエノキタケでは、著しく多くのD_2が生成されたので、食生活において効果的なビタミンD_2供給源として利用するために、適切な照射条件、嗜好性、調理や加工食品への利用を検討した。 エノキタケに紫外線を2時間或は20分照射するとD_2は乾物1g当たりそれぞれ約2,000IU,1,000IU生成され、栄養学的に考えると、紫外線照射は20〜30分でよいと思われた。また、生産者レベルでは、培養の最後の工程で培養ビンの上から照射することを想定し、実験室でのモデル装置での照射では、30分で約500IU/g(乾物)のD_2が生成され、D_2強化エノキタケを市場に出すことも可能であろうと思われた。 エノキタケの乾燥物、または乾燥粉末としての利用を考えた。乾燥によりD_2はほとんど減少することなく、また冷室では数か月は安定であり、呈味もまた著しく増加した。照射し乾燥したエノキタケは遊離アミノ酸とヌクレオチドが主な旨味物質であった。グルタミン酸、イノシン酸(IMP)およびグアニル酸(GMP)はそれぞれ800,540および260mg%あった。GMPをIMPに換算すると、IMPとして1,138mg%になり、鰹節の600mg%より多かった。グルタミン酸とヌクレオチドの割合からみて、両者の相乗効果により強い旨味を呈すると思われた。 各種調理に応用し、官能検査に供したところ、旨味やコクの増加が感知され、紫外線照射エノキタケはビタミンDのよい給源となるばかりでなく、旨味も増し、利用上好都合と思われた。
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