研究概要 |
目的:インドネシアおよびその周辺国で使用されているパ-ムシュガ-は,ヤシの樹液を鉄釜で濃縮して作る。精製度が低いため,パ-ムシュガ-中の鉄含量は高く,生物的有効性も高いものと予想される。黒砂糖と同様に,パ-ムシュガ-にも血漿コレステロ-ル低下作用が期待できる。そこで,白ネズミを使ってパ-ムシュガ-の貪血改善と血清コレステロ-ル低下作用について調べた。 方法:3週間鉄欠乏食で白ネズミを飼育した後,糖質源としてパ-ムシュガ-(66%)を含む飼料を与え,3週間飼育し,血清鉄,ヘモグロビン濃度を測定した。糖質源としてパ-ムシュガ-(65.1%)を含む高コレステロ-ル食で3週間飼育した後,血清コレステロ-ル,各組織のコレステロ-ル,糞中ステロ-ル,および胆汁酸濃度を測定した。 結果:3週間鉄欠乏食で飼育した白ネズミに,パ-ムシュガ-食を与えると血清鉄およびヘモグロビン濃度は基本食群の47%,88%まで回復した。このパ-ムシュガ-食は,鉄濃度が基本食の11%しか含まれていないので,硫酸第二鉄をパ-ムシュガ-食に添加し,基本食と同じ鉄濃度にし,鉄欠乏白ネズミに与えた。鉄添加パ-ムシュガ-食群の血清鉄およびヘモグロビン濃度は基本食群の109%,101%で,貪血を改善した。 パ-ムシュガ-は血清コレステロ-ル量,動脈硬化指数を低下させ,肝臓のコレステロ-ル濃度も低下させた。排泄胆汁酸量はパ-ムシュガ-食群で増加した。これらの変化は有意なものであった。 結論:パ-ムシュガ-中には二価鉄が多く,生物的有効性が高い。パ-ムシュガ-は,三価鉄の吸収を高め,血液中,肝臓中のコレステロ-ル濃度を低下させる機能がある。パ-ムシュガ-の広い利用は栄養改善に有益で,パ-ム(ヤシ)生産地の産業振興に役立つと考える。
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