(1)二連弦の定理 ガリレオが1602年に「およそ証明できた」と公言した上記定理(『新科学対話』第3日定理VI)は、当初、加速運動ではなく等速運動のもとで証明されたことについて、ほぼ確定的な結論が得られた。 (2)振子の法則の発見と落下の法則 最近S.ドレイクによって主張されている落下の法則を振子の法則との関係でガリレオが発見しえたという点について、詳細な検討がなされ、ガリレオの手稿の検討から、振子の法則を発見したとみられるデ-タの存在を示した。その結果、ドレイクの主張ではあいまいにしか表現されていなかった発見過程の具体的なスジ道についても、一定の方向づけが示された。 (3)振子の周期について 上のこととの関連で、ガリレオの手稿の中で、振子の周期の値を正しく言い当てているものが存在することが発見された。そこでのガリレオの論拠づけは必ずしも正当なものではないが、実験で具体的に得られた値からの推定として想定されたものと思われる。 (4)初期研究の順序付け 論理的一貫性が最大となることを歴史的順序付けの原理として、記述年代と順序の確定されていないガリレオの初期の手稿(1604年頃)について整理し、従来の解釈とは違う理解を示した。これにもとづいていわゆる誤謬推論説(ワイサン、吉仲)に対する枇判的見解を示した。 (5)手稿の邦訳 当初、ガリレオの力学関係の手稿の全訳を目指したが、従来からの訳のあるものについても問題が残されていることが判明し、作業は部分的にとどまったが、いくつかの手稿については、訳の改善がはかられた。
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