研究概要 |
明治期における鉄道橋梁の発達過程を、技術史的に考察し、併せて、桁の使用状況と現状を明らかにし、歴史的橋梁の評価・保全・活用などの施策に資する目的で次の研究をおこなった。 1)外国技術の受容と技術的自立の過程に関する考察 当時の日本人技術者たちが外国の技術をどう学び、何を考え、何をしたかを人物、組織、設計法、作品などから考察した。その中で、特に、原口要原設計の105ft上路トラス桁、磐越西線長谷川橋梁100ft上路トラス桁、関西鉄道設計の木津川橋梁などについて、その構造的特徴を考察した。また、中央本線の小石川橋梁のトラス桁について、構造的に、特異なものであるので、寸法測定を含む詳細な現地調査を行った。その結果、前後の下路プレ-トガ-ダ-と同じく、ドイツのハ-コ-ト社の製品であることが明らかとなった。 鉄道院設計のトラス桁の代表例として、設計活荷重E45の94ft桁(桂川,茨木川)、E40の200ft桁(犀川)、94ft桁(上神崎川)などの、やや詳細な現橋調査を行い、すでに調査済みの英国系・米国系・ドイツ系の桁と比較し、輸入から脱却して技術的自立を果たした力強い証しであることを確認した。 2)明治時代に設計された橋桁の製作・架設・撤去・転用・現存の状況に関する調査 輸入トラス桁に関しては、既発表の一覧表の訂補と、現存のものについてのデ-タベ-ス化を行った。国産のトラス桁についての調査を行い、デ-タベ-ス化した。プレ-トガ-ダ-については形式、支間ごとに現用・現存の桁をリストアップしたが、桁の同定は予想外に困難で、リストの充実にはなお相当の作業が必要である。 これらの成果は土木学会「土木史研究」ほかに順次発表するほか、「総覧」をまとめたいと考えている。
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