研究概要 |
この研究では運動遅滞児(運動能力テストを実施して下位25%の者)の運動発達過程と養育態度について,運動優良群(上位25%の者)と比較して検討した結果,次のことが明らかとなった.歩行運動(自由に歩く,階段の登り降り等11項目)では項目通過率を80%でみた場合,運動遅滞群と運動優良群に大きな発達差はみられなかった.走運動(直線走,競争走等5項目)では競争走において運動遅滞群が1年の発達の遅れをみたが,その他では差はみられなかった.跳躍運動(単純上下跳躍,片足連続跳躍,縄跳び,スキップ等8項目)で両群に有意な差のみられる項目をみると,階段(2,3段)からの飛び降りは2歳5月以前,片足連続跳びは3歳11月以前,高度1mからの飛び降りおよび縄跳びは4歳5月以前の各年齢において通過率が低い.鉄棒運動(単純身体振動,前回り下り,足抜き回り等6項目)の可能(開始)年齢は両群とも4歳以降であったが,単純身体振動運動以外は1年〜1年半の発達の遅れがみられ,有意であった.以上のことから運動遅滞群は歩・走などの平面移動運動では特に発達遅滞はみられないが,上下運動の加わる跳躍,鉄棒運動などで発達遅滞がみられるようになり,年齢的には2歳半〜3歳以降目立つようになるといえるだろう.次に運動遅滞児の養育態度についてみると,消極的拒否の態度が運動遅滞群が有意に強く,厳格の態度では運動遅滞群は強いものからほとんど問題のない者まで分散しているのに対し,優良群は41〜60パ-センタイルを境界として度数が両極に分かれるという結果を得た.干渉および盲従の態度ではやや運動遅滞群が強いという結果であった.矛盾の態度については優良群に強いという結果がえられたが,積極拒否,期待不安,溺愛,不一致の態度には差はみられなかった.以上のことから,幼児期の運動は遊びの中で行われるものであり,親の子供に対する接し方はさまざまな子供の活動に大きく影響していると推測される.
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