研究概要 |
1.肢体不自由児の一日の心拍数(HR)変化,尿中17ーOHCS,クレアチニン(Cr),電解質排泄変動およびエネルギ-摂取量 脳性麻痺,二分脊椎等の軽症肢体不自由男児6名(H群:11.7±2.3歳,141.9±10.5cm,37.4±9.2kg)および健常男児6名(C群:9.8±0.4歳,135.8±5.5cm,32.8±7.7kg)を対象に調べた.携帯型心拍計で測定したH群の一日の心拍数(HR)変化は睡眠中57〜78拍/分,覚醒時の平均は100拍前後,最高でも170拍/分(1例のみ)に過ぎなかった.しかし,対照健常児(C群)では覚醒時平均HRは100〜150拍/分,最高値は殆どの者が200拍/分以上を示した.H群の一日尿量は765±210ml,Cr排泄量は0.63±0.23g/日で,いずれもC群より少なかった.17ーOHCSの尿中排泄には明確なリズムがあり,午前8時〜12時頃までの排泄量が多かった.この排泄リズムは健常児および脳性麻痺等の障害児共にみられた.一日のエネルギ-摂取量はH群では2468±592kcalでC群よりやや多かった.以上の結果から,肢体不自由児群は健常対照児に比べ一日の摂取熱量がやや多く,逆に心拍数変化から推定したエネルギ-消費量が少なく尿中Cr排泄量も少なかったことがわかる.このことは障害児では筋量が少ないか,筋活動量が少ないことが示唆される.さらに,エネルギ-将取量の増加が持続すれば将来肥満に発展する可能性も隠せない. 2.心拍数および尿中ホルモン,生化学成分におよぼす約30分間の自由遊泳運動の影響 上記障害児および健常対照児に約30分間の水泳を行わせた.障害の程度に応じ,フロ-トの使用および介添いが必要であった.障害児の水泳中のHRは120〜150拍/分,対照児はそれよりも高かった。水泳運動後の尿成分のうち,H群の尿量の増加が著明であった以外両群間に殆ど差はなかった.C群の水泳時HRが多かったにもかかわらずカテコ-ルアミン排泄量にも差がなかった.H群の利尿現象はプ-ル水温および水圧による末梢血管系の影響に起因したものと思われる.
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