研究概要 |
本研究は、複数の筋が同時に活動した時に、末梢血流量が各筋にどのように分配されるかを明らかにして、筋量の増加に伴う末梢循環系の調節システムを明らかにすることを目的としている。血流量の測定はラバ-ストレンゲ-ジを用いた静脈閉塞法によった。対象とした運動は、仰臥位姿勢での、足底屈運動(P)、掌握運動(H)、肘屈曲運動(EF)、肘伸展運動(EE)であり、いずれも60回/分の動的運動とした。5種類のプロトコ-ルで実験を行い、次のような結果が得られた。 1、10%MVCの負荷運動を(P10)を30秒間行い、その後30,50,70%MVC負荷の掌握運動(H30,H50,H70)を付加した手足同時運動を3秒間実施したところ、P10H50,P10H70運動後の下腿血流量(CBF)はコントロ-ルのP10・60s運動に対して有意な減少を示した。下腿血流抵抗は、P10H70運動後に有意な増加を示した。 2、H10にP30,50,70運動を付加するとFBFはH10P50では有意な減少を示したが、H10P70では有意な増加を示した。 3、P10運動の2,5,10分目からExhaustionまでのH50運動を付加すると、CBFはいずれも有意な減少を示した。 4、P10運動の10分目からH50を付加してExhaustionまで行わせると、CBFと下腿血管コンダクタンスの有意な減少と同時に、微小神経電図法により記録した膝窩部脛骨神経からの交感神経活動の亢進が見られた。 5、P10運動に、EF10,EF50,EE10,EE50運動を付加するとEF50,EE50ではCBFの減少が見られたが、有意であったのはEF付加のみであった。 以上の結果から、複数筋群が同時に活動すると、活動筋への血流量減少が起こることが認められた。そして、この減少が低強度の運動に50%MVC以上の高い強度の筋運動が付加された場合に起こり得ることが確認された。
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