研究概要 |
蛋白質の安定性、立体構造形成、及び機能発現に占めるプロリン残基の役割を明らかにするために、大腸菌のトリプトファン合成酸素αサブユニットの6個の保存プロリン残基(28,57,63,96,132,207)のアラニンまたはグリシン変異型の構造、安定性、機能への影響を調べた結果、次のような重要な知見を得ることができた。1)一般に、アラニンはヘリックス形成能の高い残基そしてプロリンはヘリックス破壊残基として知られている。しかし、我々の結果から、ル-プ上に存在するプロリン残基が、ヘリックス構造の安定化に寄与していることが分かった。2)一般に、プロリンは変性状態のエントロピ-を減少させることによって、蛋白質の安定化に寄与しているとされているが、我々の結果は、それを支持していない。プロリンからアラニン変異型のなかには変性のエントロピ-を減少したものもあった。これらの結果を詳細に検討した結果、未変性状態でのプロリン残基が局在する構造上の特徴と深く関係していることが分かった。つまり、未変性状態でのプロリン残基の揺らぎと関係し、揺らぎの低い部位に位置するプロリン残基は構造の安定化に寄与するが、揺らぎの高い部位でのプロリン残基は安定化にほとんど寄与しない。その安定化への寄与は揺らぎの程度に比例することが分かった。3)βサブユニットとの接触部位にあるプロリン残基は、αとβサブユニットとの複合体形成による両サブユニット独自の触媒機能の増幅に重要な役割を果たしていることが分かった。このαとβサブユニットの相互作用を等温滴定型カロリメ-タ-(OMEGA)を用いて調べた結果、複合体の増幅効果はαとβサブユニット間の結合定数の強さと関連することが判明した。
|