研究概要 |
1.青色色素生産誘導因子IMー2が、生産菌であるStreptomyces sp.FRIー5株にどのような影響を与えるかを知るるため、培養5時間目にIMー2を添加し、菌体生育、青色色素生産、抗生物質生産について経時的に検討した。IMー2添加時には、青色色素の生産は、添加後1時間で誘導され、3時間でピ-クに達した後、除々に減少するが、IMー2未添加の場合には、培養31時間まで全く青色色素の生産は見られず、この培養条件下では、内生のIMー2は生産されていないと結論される。菌体量は、IMー2未添加時には、12時間まで徐々に増加するが、IMー2添加により菌体増殖は即座に停止した。生産される抗生物質は、Bacillus subtilisを被検菌とするカップ法で測定したが、IMー2添加、未添加により、生じるクリア-ゾ-ンの形状に違いが見られ、異なった抗生物質が生産されている事が示唆された。 2.IMー2未添加時に生産される抗生物質を同定するため、培養液5Lより4段階の精製操作を経て、13.5mgの抗生物質を単離した。NMR,IR,質量分析などの機器分析を行い、物性を決定した結果、Dーcycloserineであることが判明した。従って、本菌は、IMー2不在下では、Dーcycloserineを生産すると結論される。 3.次に、IMー2添加時に生産される抗生物質を同定するために、培養液25Lより6段階の精製操作を経て2種類の抗生物質(2.7mgと30.mg)及び3種類の類縁体(1.3mg,1.4mg及び2.4mg)を単離した。NMR,IR,質量分析などの機器分析を行い、物生を決定した結果、いずれもヌクレオシド系抗生物質及びその類縁体と推定された。既知ヌクレオシド系抗生物質と比較したところ、抗菌活性をもつ化合物は各々showdomycin及びminimycinと一致した。3種類の類縁体は、同様にαーshowdomycin、αーminimycin及び5ーαーarabinofuranosylー1、3ーoxazinー2,4ーdioneと同定した。従って、本菌は、IMー2存在下では、ヌクレオシド系抗生物質を生産すると結論される。 4.IMー2添加、未添加時に生産される抗生物質を経時的にHPLCを用いて定量したところ、IMー2添加によりDーcycloserineの生産は完全に抑制され、showdomycinやminimycinなどのヌクレオシド系抗生物質の生産が誘導される事が判明した。
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