研究概要 |
1.ヒト赤血球サイトゾ-ル画分より精製したホスファタ-ゼIはタイプ2Aに属し,その分子量は180,000で、34kDaの触媒サブユニットαと63及び74kDaの調節サブユニットβ,δを各1分子ずつ含有している。cAMP依存性プロテインキナ-ゼ(Aキナ-ゼ)及びプロテインキナ-ゼC(Cキナ-ゼ)により、ホスファタ-ゼIの74kDa δサブユニットのセリン残基が定量的にリン酸化された。このリン酸化反応におけるホスファタ-ゼIに対するKmは、Aキナ-ゼで0.27μM、Cキナ-ゼで0.15μMで赤血球内の同酵素の推定濃度(0.2μM)にほぼ等しい。 2.ホスホリラ-ゼキナ-ゼ,Ca^<2+>・カルモデュリン依存性プロテインキナ-ゼII,ミオシン軽鎖キナ-ゼ,cGMP依存性プロテインキナ-ゼ及びカゼインキナ-ゼIによるδサブユニットのリン酸化は認められなかった。 3.リン酸化されたδサブユニットのトリプシン消化ペプチドの比較により、A及びCキナ-ゼに共通のリン酸化部位と、Cキナ-ゼに特有なリン酸化部位が認められた。 4.Aキナ-ゼあるいはCキナ-ゼによるδサブユニットのリン酸化により、リン酸化H1ヒストンに対する脱リン酸活性は20ー40%上昇した。一方、リン酸化ミオシン軽鎖に対する脱リン酸活性は、Cキナ-ゼによるδサブユニットのリン酸化で50%促進されたが、Aキナ-ゼによるリン酸化では20%抑制された。異なるキナ-ゼによるδサブユニットのリン酸化が、異なる活性制御を行なうことが示唆された。
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