研究概要 |
2,8ジハイドロキシアデニン(DHA)を成分とする尿路結石を主症状とする劣性遺伝病が常染色体16番長腕上に遺伝子が存在するアデニンフォスフォリボシルトランスフェラ-ゼ(APRT)欠損に因る。そこで患者の親から樹立されたリンパ芽球様細胞株(LCL)を材料にaprt+/ー→ー/ーの突然変異ジアミノブリン抵抗性(DAP^r)を指標として定量的に検出する素を開発した。 ^<137>Csγ線照射によって同時に測定したHPRT座位上の変異であるチオグアニン抵抗性(TG^r)に比べ、約10倍の効率でDAP^r変異が誘発された。近畿大学原子炉(UTRーKINKI)の核分裂中性子とγ線の混合放射線によるDAP^r誘発もTG^r誘発の7〜10倍高い効率であったが,RBEは2以下で他の生物学的終結点や従前の報告とは異っているので次年度での繰返し実験による確認が必要である。ヘテロ保因者由来LCLがRFLPについてもヘテロの二重異型接合体であることをSphIで見出しこのヘテロ接合状態の喪失を指標に(LOH)放射線誘発突然変異の特徴を解析した。サザンブロット解析で自発DAP^rクロ-ンでは22/26(85%) ^<137>Csγ線2Gy(7倍上昇)では64/69(93%)でLOHを伴っており,大きなゲノム変化がDAP^rの成因と考えられた。これに対し紫外線10J/n^2(2倍上昇)では17/13(55%)MNNG1.2μs/ml(20倍上昇)では13/43(30.2%)であった。これまで我々がHPRT座位でTG^rクロ-ンのDNA解析から自発変異で29% ^<137>Csγ線で47%に何らかの大きなゲノム変化(欠失)を観察していることから,常染色体上のAPRT座位の場合には,相同染色体のheritable変異がlocalized change(点突然変異と極めて小さい欠失)である限り,大きなゲノム変化を伴う変異体が生存して回収される確率の高いことが,自発変異粗度,電離放射線誘発頻度でDAP^rがTG^rより約10倍高い理由であることが示唆された。
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