大気中のラドン及びその娘核種は、近年人の呼吸器被曝の主因として注目を集め、またその他の事象とも関連して、広く世界中で濃度測定が行われているが、得られた値には測定器による違いが少なくない。 大気中ラドン娘核種濃度測定は通常フィルタ-法を用いて、ラドン娘3核種間の放射平衡を仮定した平衡仮定濃度が求められている。これらの測定において、捕集方式が異なる測定器間の誤差の要因の一つとして考えられるラドン娘3核種間の放射平衡度に着目して、その影響を実験的及び理論的に解析した。 実験は、(1)ステップ濾紙送り方式、(2)固定濾紙積算捕集方式、及び(3)固定濾紙式の装置を用いてマニュアルで毎回濾紙を交換する方式の3方式の測定器を用いた大気中ラドン娘核種濃度の同時同場所測定を行った。また(3)の装置では1分毎の計数値を読み取り、3回測定法によりラドン娘3核種それぞれの濃度を求めた。(1)と(3)の装置は原理的には同じものであり、得られた結果は直線関係を示した。(2)と(3)では、(2)の積算捕集の2回目以降(2)で得られた値が(3)より大きくなる。(2)の値については、ラドン娘核種の放射平衡度を用いて捕正を行った。その結果、放射平衡度の影響がかなり大きい場合があることが明らかになったが、放射平衡度による捕正のみでは充分ではなかった。 積算捕集方式に対する放射平衡度の影響の理論的な取り扱いでは、放射平衡度が種々異なる場合について計算を行い、濃度の減少時にその影響が特に大きく現れることが明らかになり、条件によっては、誤差が10%以上になることが判った。 本研究の成果は、日本原子力学会1991年年会に「大気中ラドン族濃度測定における誤差要因としての放射平衡仮定」と題して発表する。
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