研究概要 |
エネルギー関連材料として厳しい環境に耐える高強度・高熱伝導性の機能を有するセラミックス新素材の開発が強く求められている。本研究においては,これらの材料を用いて原子炉中性子照射法と真空処理法により出発物質になかった新しい機能を付加し,また,本来の優れた特性を更に増強していくことに目標をおいてきた。以上を念頭に進めてきた結果を以下に報告する。1.本研究において用いた試料は窒化物であるAlNとBN,そして炭化物であるSiCである。これらの試料中に中性子照射で格子欠陥を導入し,その欠陥のタイプをESR測定法により同定することができた。これはNないしC空孔に電子が捕獲されたタイプの基本的欠陥である。BNはAlNに比べて ^<10>B(n,α)^7Li反応による欠陥生成が著しく,熱中性子5×10^<17>/cm^2の照射量に対して5.5×10^<20>/cm^3もの欠陥が発生することがわかった。2.試料に対する中性子照射量を変化させながらビッカース硬度を調べた。この結果, ^<10>B核反応による欠陥生成効果のあるBNの硬度増強が特に明瞭に現れてくることが分かった。BNはダイヤモンドに次ぐ硬度を有するが,照射条件によりこの硬度を1.6〜2.0倍に増強できることを明らかにした。3.AlNについては真空中においてN原子を蒸発させN空孔を高濃度に生成させると,N複合空孔へとなり,更にAlの金属表面層の形成が確認された。これは,表面に対して内部よりセラミックスから金属へと傾斜的に特性が組成に応じて変化している結果と考えられる。以上,このような手法によりセラミックスの表面及び内部の格子欠陥を制御することにより,この特性を大きく改善していくことが可能であることを実証した。 本研究についての点欠陥の同定と熱運動については既に出版又は印刷中である。
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