研究概要 |
本研究は,野外調査と室内実験の両面から崖錐斜面物質である砂礫の安息角と内部摩擦角との計測を行い,両者の関係を明確にすることにより,崖錐の勾配を力学的安定問題としてとらえ,その勾配が何によって決まっているかを明らかにすることを目的として始められた.安息角の計測のための傾斜箱(ティルティング・ボックス)を作製した.傾斜箱は砂礫用の大型のものと,アルミ丸棒用の小型のものがつくれらた.一方,せん断抵抗角の計測は大型一面せん断試験機を用いて行った.安息角およびせん断抵抗角の計測対象材料としては,主に採石,ガラスビ-ズ,砂,アルミ丸棒などを使用した.得られた成果の主な結論は以下のようにまとめられる. 1.「崖錐」および「安息角」に関する従来の研究をレビュ-し,それらの問題点を明らかにした. 2.安息角の計測をする場合には,実験試料の粒径のおよそ60ー70倍以上の斜面長を必要とする. 3.均一粒径から成る斜面の安息角は大きいが,異種粒径の粒子が混合すると安息角が急激に低下する. 4.斜面勾配が安息角を超えた時に発生する崩れの深さは斜面構成粒子の径の約8倍程となる. 5.粒状体斜面の崩れは表層の不安定粒子が回転することによって引き起こされたのに対し,せん断抵抗角は従来からに知見のとおり,粒子間の滑りが重要であることがわかった.さらに,安息角とせん断抵抗角との間には等しいという関係が認められないことから,それらをコントロ-ルしているメカニズムが異なり,両者は別な物理量である.
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