研究概要 |
都市は人間活動の最大の集積場であり、自然環境の最大の変質場である.都市では自然面の人工面化・都市構造の高密化に伴い,熱・放射エネルギ-の再配分の改変と人工熱・水分・汚染物質の大量放出がみられる.都市の長波放射場は複雑な都市面構造と都市の高温多湿汚染大気とによる上下2段階の遮蔽効果の影響下にあるという「都市の長波放射場モデル」を提案し実証中である.本年度は,都市内の長波放射場の鉛直構造の実態をまず明らかにし,さらに都市面構造(ビルの遮蔽度と壁面・窓面温度)の影響や温度場・湿度場の鉛直構造との関係を野外観測に基づき考察した.また、長波放射場の水平構造についてもあわせて考察を進めた.(1)鉛直構造の定点観測は筑波研究学園都市において寒候季の晴天静穏の昼夜間(5分間平均値の連続観測)を通して実施した.観測はビル壁面近傍と都市キャニオン中央部で,各々,キャニオン内の5高度と屋上面での正味放射量(Rn)の鉛直分布,及び3高度と屋上面での上向(R↑)・下向(R↓)放射量の鉛直分布観測を計9日間行った。その結果,都市キャニオン内の放射場の鉛直構造の全日の振舞いを捉えることができた.例えば,Rnの日総量はキャニオン中央では全層で負(放熱)になるのに対し壁近傍ではほぼ正(蓄熱),夜間の|Rn|の各層での時間変化はほぼ一定であるが上層ほど|Rn|が常に大きい,日中のRnの極大層は時間経過に伴い下層へ移行していく,そしてRnの変化はR↑よりもR↓によって決められている等が判明した。(2)各測定高度において魚眼レンズを用いて計測した上面・下面の遮蔽率とビル構成面の温度特性から,殊に夜間の各層での放射収支成分の振舞いを説明できる.日中の放射の挙動には日射の侵入の時間変化が大きく関与している.また,同時観測した温度場・湿度場の鉛直分布との興味ある対応もみられた.(3)3都市同時の移動観測(2夜間・8回)を行い,都市の長波放射場の水平構造の特性をさらに明確に捉えることもできた.
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