研究概要 |
伊豆諸島には完新世に活動した多くの火山が分布する。これらの火山噴出物中からは、縄文時代以降の多数の人類遺跡が発見されている。この研究では、これらの人類遺跡と火山噴出物の対比・編年を行なうことによって、伊豆諸島における火山活動史のなかで人類遺跡の分布や立地がどのように変化したかを明らかにしようとするものである。その成果は次のように要約できる。 1)伊豆諸島ににおける広域テフラの追跡から、八丈島、三宅島、神津島、利島などで、火山噴出物と鬼界ーアカホヤ火山灰(KーAh)や姶良Tn火山灰(AT)との層位関係を明らかにするために、採取したテフラ試料について鉱物分析と特定鉱物の屈折率測定を行った。 2)鬼界ーアカホヤ火山灰が縄文早期終末の層準指示層であることから、この示標テフラと火山噴出物中から発見される遺跡・遺物との層位関係を追跡した。伊豆諸島では竜の口遺跡(伊豆大島)において縄文時代早期終末の天神山武土器の層位と一致することが明らかになっているが、八丈島や三宅島においても、これを裏付ける資料が得られた。 3)八丈島における火山の形成史をテフラ層序、広域テフラ、土器型式、放射性炭素による年代測定結果から検討した結果、東山火山のカルデラが21,000〜22,000年前の姶良Tn火山灰の噴出と極めて近い時代に形成されたことが明らかになった。また東山火山の活動は、約15,000年前からデイサイト質から玄武岩質の火山噴出物を主体とする火山活動に変化したが、噴出物中の特定鉱物の屈折率が、これと対応して変化していることが明らかになった。
|