研究概要 |
肝ミクロソ-ムにおけるNADHおよびNADPHを電子供与体とする2つの電子伝達経路ではたらく2種のフラビン還元酵素(NADHーチトクロムb5還元酵素およびNADPHーチトクロム450還元酵素)の立体構造決定を目指して,X線結晶解析を行った。 NADHーチトクロムb5還元酵素については、多重同形置換法で電子密度を得るため、重原子誘導体の検索を行った。しかし,2つ必要な重原子誘導体結晶は、1つしか良好なものが得られなかったので,これを用いて単一同形置換法での電子密度図を描いた。この電子密度図からは、分子の境界を明確に決定することができた。しかし、より詳しい構造情報は得られなかったので,分解能を上げて回折デ-タを測定することとシンクロトロン放射光を用いて異常分散効果を精密に測定することを行い、3Å分解能での電子密度図を得た。以上の電子密度図から,分子の概形とおおまかな折れたたみを求め、フラビン(FAD)の結合位置を予想した。今後は多重同形置換法あるいは異常分散効果の精密測定などによって、電子密度図の質を向上させることが課題となる。 NADPHーチトクロムP450還元酵素については、X線構造解析に用いうる結晶を得ることを試みた。このタンパク質の結晶化に用いることができると思われる沈殿剤を見つけた。タンパク質を大量にかつ高純度に精製することにも力をそそき,多くの結晶化条件を試みたが、このタンパク質については良好な結晶を得るに至らなかった。さらに詳細な条件検索が必要である。
|