研究概要 |
1,遺伝学に関係する各学会の発行する専門雑誌,商業雑誌および中等教育(旧制の中学校・女学校等)の教科書等にある遺伝教育の資料を,明治後期から昭和20年代にかけて調査した。その結果,日本における遺伝教育内容の導入時期は,大正2〜3年であったことが明らかになった。その当時,文部省教員検定試験において遺伝の内容が出題され、「博物通論」の教科書でも遺伝が扱われるようになった。それ以後“遺伝の法則"として教育内容の重要な項目として昭和中期まで扱われたが,その法則の内容は,著者によって異なっていた。 2,トウモロコシ(ピ-タ-コ-ン),ダイズ(T219),Brassica(RCBr)などの植物材料を用い,メンデルの優性・分離の法則が検証出来るかどうかを確認した。その結果,トウモロコシ,ダイズでは,ともに3:1の理論値に近い実験値が得られた。ダイズでは特に,系統維持が容易で教材的価値が高いことがわかった。さらに,このダイズを大量に増殖させ,広島大学附属中・高等学校その他教育現場に分譲し実際の生徒実験として実施したところ,その有用性が実証された。現在,これに関するカリキュラムを作成中であり,その普及をはかっている。 3,遺伝の内容を理解させるためには,その基礎として受精現象の把握が必要である。そのために植物の受精現象をを生きたままの状態で観察・記録し,視聴覚教材化を検討した。その結果,花粉の発芽や胚襄の生体観察が可能であることが明らかになり,これらについてVTRで記録した。このVTRは,遺伝の導入として有効であることがわかった。 以上の通り,本研究によって遺伝教育に関する大きな成果が得られ,研究成果報告書として出版公表した。今後本研究の成果に基づいて,現場の教育内容の改善をはかるべく、附属中・高との共同研究を開始していきたい。
|