研究概要 |
中学校・高等学校における生物の実験・観察の内容の調査・分析を行うと共に,授業で活用できる定量的な生物実験の開発を行った。 1.「光の強さと光合成量」の関係を定量的に調べる実験として,各照度におけるウキクサの成長量(湿重量)を1日毎に電子てんびんで計量し,各照度における成長量を定量的に調べる実験方法と,常緑樹の葉を用いて,各照度における葉の二酸化炭素吸収量を一定時間後にガス検知器を用いて測定する方法とを開発した。前者は,数日間の継続実験として,後者は1〜2時間の実験として,探究的な定量的実験として授業に活用できる。 2.「湿度と呼吸量」の定量的実験として,各温度における呼吸量を,メダカの鰓蓋の運動回数で測定する方法と,発芽種子が呼吸で消費する酸素量をメスピペットで測定する方法とを研究した。両者の方法とも,簡単な実験装置で,しかも50分の授業時間内で容易に呼吸量が測定できるので,定量的な実験として有効であることが明らかとなった。 3.「外的条件と蒸散量」の定量的実験として,一定時間に蒸散によって減少した水量を電子てんびんで計量し,葉面積の測定は重さに置換する方法で求めることで,一定時間における単位面積当たりの蒸散量が正確に定量できることが明らかとなった。この方法は,従来の方法より簡単で,しかも50分の授業時間内に行える有効な実験といえる。 4.理科教科書に見られる定量的な生物実験・観察の調査・分析 中学校及び高等学校の理科教科書を基に,生物の実験・観察の内容を調査・分析した結果,定量的な見方をする実験・観察が占める割合は,極めて少なく,小学校よりも中学校のほうが,また,従前の教科書よりも現行のもののほうがその占める割合が小さいことが明らかとなり,生物教育における定量的な実験・観察の導入の必要性が明らかとなった。
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