研究概要 |
1.「集団年齢」という新しい概念を提出した。集団が形成されてからの経過時間をもって定義される。この集団年齢とともに進行する集団のもつ標準化,斉一化,および構造化機能が、パラドキシカルに集団の硬直や衰弱をもたらす可能性について理論的な整理を行なった。この集団年齢の考え方に基づくことで、従来のリ-ダ-シップ理論の特徴および相互関連をより明確にすることができる。 2.上記の理論的考察の妥当性を検討するために、3つの実証研究を実施した。第1は実験室実験であった。ある課題を集団に与えて遂行させる。一定の時間経過後、意図的に課題の特性を変更する状況を作り出した。この集団状況変化に集団がいかに対応するかを分析した。結果は次のことを示した。(1)集団は当初の課題を効率よく遂行するために構造化を進めていく。(2)課題が新規のものに変更されると効率を大きく落す。これは構造化を順調に進めた高効率集団においてよりあてはまった。また明瞭なリ-ダ-の存在もこの傾向を強めた。 3.第2の実証研究では、職場集団のもつ革新指向性(職務遂行面での必要な改善や革新の導入に対する積極的姿勢)の強さを規定する要因の分析を行なった。集団年齢の高さのみならず、職場内の情報伝達ネットワ-ク(とりわけ上下間)の退化が革新指向性を下降させた。 4.第3の実証研究は、ビジネスゲ-ムを用いたものであった。集団業績の低下が成員の視野の狭小化やろうばい的な意思決定を生み、これがより一段とその集団の業績を停滞させることが明らかとなった。 5.これらの諸結果から、集団は外部から、あるいは内部において意図的介入をなさない限り、外的環境への対応や適応をはたせないことが指摘できる。今後において集団変動にかかわる研究へと、本研究の成果を展開していきたい。
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