研究概要 |
過去3年間にわたる萌芽研究の期間を通じて,ネットワーカーとして,コミュニティオーガナイザーとして,面接室のカウンセラーとして,フィールドワークを行ってきた。その成果として,九州大学の内外に留学生のために多様なサポートネットワークを形成することが出来ている。この生きているネットワークシステムの形成そのものが本研究の最大の成果である。 ネットワークシステムは,従来の組織講が集団やシステムを強調するのに比べて,一人一人の人間相互のつながりを中心としたヒューマンネットワークである。外国人留学生,日本人ボランティア,外国人の家族との深層面接調査によって次のような事実があきらかになった。外国人留学生が,日本の文化や社会に適応していくためには,来日してから半年間が極めて大切なこと,そこでは,日本語の訓練だけでなく,日本人,留学生の友人,研究室の仲間,地域住民,ボランティアなどと接触するための対人関係の能力が大きく影響していることである。従って九州大学内外に形成されてきているネットワークは,これらの外国人留学生が日本社会で研究生活をしていくうえで,心理的居場所や生活面における援助を提供するうえで極めて重要な意味を持っているといえよう。 われわれは,これらの成果を踏まえて,この生きているサポートネットワークシステムを維持しながら,国際交流の様式,在り方,日本文化との接触の仕方など外国人留学生の生きたプロセスを追跡研究していくのが今後の課題である。 研究の副産物として,外国人留学生相談室は医学モデル,つまり病人の治療にあるのではなく,援助モデル,すなわち,外国人留学生の心理・生活の両面にわたって援助していくことの重要性を示唆されたことを強調しておきたい。
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