研究概要 |
自己組織化モデルでは、乳児期における情緒調整を、状態間のダイナミックな位相変化であるとみる。不快な情緒から「なだまり」へと変化し、また「なだまり」が崩壊して泣きやぐずりへと変化する過程はその一部といえよう。この研究では、乳児の情緒行動システムのリアルタイムの変化を記述するための2つのデ-タを解析することにした。いずれも、ヴィデオ録画された行動を特定の分析単位によって微細分析し、システムとしての組織化の過程を記述することを目的としている。<第1のデ-タ>これは家庭での縦断的観察であり、14名の乳児を生後1,2,4,6カ月に観察した。この乳児たちについては次年度以降も観察し、2歳まで追跡を継続する。この観察では(1)「自発的泣き」の状態から母親が抱き上げ、そして再度おろすという文脈、また(2)母親との言語的・非言語的コミュニケ-ションが中断されるという文脈で録画がなされた。ここから概略つぎの結果を得ている。乳児の「泣き」あるいは「ぐずり」を調整する制御パラメ-タとしては、身体接触と姿勢の垂直化という2成分を持つ「抱きあげ」が、およそ生後1カ月から効果をしめした。また母親との遠隔モ-ドのコミュニケ-ションが中断されることで乳児に「ぐずり」を生み出すのは、早い乳児でも、生後4カ月になってからであることも見いだされた。行動の微細な次元での組識化の過程を解明するにはまだ時間を要するが、さらに、生後6カ月時に得た気質検査(RITQ)およびデンバ-発達検査(JDDST)をもちいて乳児の個人差を説明するかたちでとりまとめることにする。さて、<第2のデ-タ>では、生後24カ月の幼児5名について観察をおこなった。これは玩具をとりあげるという文脈での幼児の行動を解析し、この月齢の幼児における母親への遠隔的モ-ドの情緒的行動(e.g.,「表情」)と近接モ-ドの情緒的行動(e.g.,「抱きつき」)との関係を調べた。
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