研究概要 |
日米構造協議に象徴される産業国際競争力に関わる諸粉争を偏りのない立場から冷静に見直すことを目的として,産業あるいは企業の国際競争力の決定メカニズムを実証的に明らかにしていくための分析枠組みを検討することから本研究は開始された。第一に,国際競争力自身をいかに定量的に把握したらよいかが議論され,実証的見地から最終的には貿易収支を基礎にするのが適切であると判断された。また,企業レベルの国際競争力の直接的決定要因として,価格ないし費用、機能水準、品質(信頼性)、納期、生産性の5つが確認され,さらに、それらを左右する企業戦略変数として,本研究では,製品戦略、研究開発戦略、設備投資戦略、グロ-バル戦略を重視した。これらの戦略諸変数を測定する具体的尺度も併せて検討した。 以上のような分析枠組みに従いつつ、その後、各研究参加者に担当分野として,製造業、流通業、金融業、サ-ビス業、産業政策を割り当て,基本的には公表統計デ-タおよびインタビュ-調査に依拠しつつ、それぞれの分野毎に計量分析の手法を用いて、わが国企業の国際競争力の決定メカニズムを検証した。デ-タの入手可能性には限界があるため,適切なる定量的デ-タが得られない分野については、系時的経緯をケ-ス・スタディとしてまとめることで補完することとした。また,米国を始めとする諸外国企業の国際競争力およびその決定要因についてのいくつかの既存業績との比較を通じて、わが国企業の国際競争力が相対的に高い分野(製造業等)、国際競争力の決定要因が諸外国と大きく異なる分野を発見し、そのような相違を生ぜしめた原因について考察した。それに基づいて、主として,非製造業分野に対する産業政策の望ましい方向性について、いくつかのインプリケ-ションを導出した。
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