研究概要 |
光散乱による磁気相転移を研究するために不可欠な、温度・磁場可変型金属製液体ヘリウム用クライオスタットを完成させた。このクライオスタットの完成により、温度範囲10K〜300K、磁場範囲0〜4kOeでの実験が可能となった。既に完成済みの5パス型ブリルアン散乱装置と組み合わせて、金属磁性体単結晶MnPの強磁性スピン波エネルギ-ギャップ決定と強磁性/反強磁性多層膜(PtMnSb/CuMnSb)の55K磁気相転移研究を行った。 MnPについては80Kから300Kまでの温度範囲で、ブリルアン散乱実験を行い、スピン波エネルギ-ギャップの温度変化を測定した。150K以下の温度領域でブリルアン散乱から求められたエネルギ-ギャップと中性子非弾性散乱や他の測定法から求められたギャップが良く一致することから、ブリルアン散乱が磁性体単結晶のスピン波測定手段として極めて有効であることを明らかにすることが出来た。今後、更に低温での測定を行い、フェロ/スクリュ-相転移(〜45K)に伴うスピン波の振舞いについて明らかにする予定である。 PtMnSbは室温で強磁性であるが、CuMnSbは55Kで反強磁性相へ相転移する。従って、PtMnSb/CuMnSb多層膜は強磁性/常磁性多層膜から強磁性/反強磁性多層膜への磁気相転移を示す。PtMnSb層の厚さを10nmに固定し、CuMnSb層の厚さを1nmから100nmまで変えた多層膜について、反強磁性相転移がスピン波エネルギ-に及ぼす効果を研究した。CuMnSb膜厚5nmと10nmの試料について測定した結果、スピン波エネルギ-が反強磁性相で約6%増加することが分かった。CuMnSb層の厚い試料についての測定が現在進行中である。 U_3P_4,Nd_2CuO_4,FeTiO_3等についての測定を準備している。
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