地球回転変動を励起する大気励起関数は、一般に極運動(ウォブル)を励起する赤道軸モ-ドと自転速度変動(LOD)を励起する極軸モ-ドからなっている。本研究で、大気励起関数のチャンドラ-周期近傍の変動周期と隣り合う準2年振動などの変動周期が互いに1/2周期あるいは倍周期の構造(倍周期長調波構造)を持つと同時にそれぞれの変動周期が上の二つのモ-ドを交互に選択する性質(モ-ド選択律)を持つこと、また、この変動周期群がチャンドラ-周期近傍の大気変動の周期と振幅を制御してチャンドラ-・ウォブルを励起・減衰させている可能性が明らかにされた。 一般に、流体運動に現われる変動周期群は年周変化などの時間的基本モ-ドや海陸分布などの空間的基本モ-ドの非線型効果による対称性の低下で生じると考えられる。従って、地球回転変動は非線型な大気水圏システムが普遍的に内蔵する上の二つのモ-ドを反映した現象と捉え直すことができる。言い換えれば、チャンドラ-・ウォブルなどを励起する赤道軸モ-ドや自転速度の準2年振動などを励起する極軸モ-ドの大気水圏システムの変動は普遍的に非線型結合の状態にあると見ることができる。このことは、チャンドラ-・ウォブルの励起源を解明するためには、極運動と自転速度変動を独立な線型システムとして扱う従来の地球回転変動の考え方に代わって、両者を非線型システムとして同時に扱う考え方を必要とすることを意味し、そうした性質をすべて備えている大気水圏システムはチャンドラ-・ウォブルの有力な励起源と考えられる。
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