研究概要 |
プロテア-ゼインヒビタ-は生体内プロテア-ゼの制御因子として極めて重要である。しかし,その本来の存在意義や生理的機能についてはほとんどわかっていない。我々はダイズBowmanーBcikインヒビタ-(BBI)の阻害部位ペプチドの合成的研究を実施してきたが,これら植物起源プロテア-ゼインヒビタ-の真の生理的機能についても全くわかっていない。本研究に於ては,植物種子中に多量に含まれるプロテア-ゼインヒビタ-に着目し,天然インヒビタ-や合成フラグメントペプチドを素材として,その真の生理的機能解明への糸口を探ることを目的とする。 1.迅速ペプチド合成法の確立:Fmoc型固相法にBOP試薬カップリングを適用し,ペプチド迅速合成法を確立した。本法により強力な機能変換キモトリプシン(Csin)インヒビタ-(BBI阻害部位ペプチド)を迅速に合成しえた。研究助成金購入の合成システムは本合成に有用であった。 2.新しい植物起源Csinインヒビタ-の発見:ニガウリ種子には,従来トリプシン(Tsin)インヒビタ-はあるがCsinインヒビタ-はないといわれてきた。精査の結果,Csinインヒビタ-の存在を確認,ゲルろ過,イオン変換クロマト,HPLCによりCsinインヒビタ-の単離に成功した。 3.植物起源プロテア-ゼインヒビタ-の新しい生理機能の発見:各種の植物ホルモン,タンパク質生合成阻害剤,Tsin,CsinおよびダイズTsinインヒビタ-(STI)を含む培地で,ダイズ種子の発芽実験を行なった。その結果,驚くべきことにSTIとCsinに極めて強い発芽,生長促進能があることが判明した。これは,全く新しい興味ある知見であり,インヒビタ-の本来の生理的機能解明の糸口となりうる新事実である。これを手がかりに,さらに研究を進展させたい。またSTIやCsinのダイズ発芽促進能は,もやし促成栽培や組織培養,細胞培養の有用添加剤として活用できるかもしれない。
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