研究概要 |
水溶液中に溶存している疎水性溶質を濃縮する新しい方法を確立する目的で研究を行なった。 1.ポリテトラフルオロエチレン(以下、テフロンと略す)は、それ自体、疎水性であり、疎水性溶質をその表面に吸着する。この性質を利用して、無電荷金属錯体並びに芳香族炭化水素を水溶液からテフロン材の表面に効果的に捕そくすることができた。捕そくするための実験条件について検討した。400〜500mlの試料水溶液にテフロン製テープ(長さ20cm、幅1.3cm、厚み0.1mmのシールテープ)を浮かべ、有機溶媒(主としてクロロホルム)蒸気を試料水溶液中に30分間通気し、閉じられた系内で循環するのが最も効果的であることが判明した。また、テフロン材は水に浮くものでなければならない。無電荷金属錯体として、鉄(III)-8-ヒドロキシキノリン錯体、ニッケル(II)-ジメチルグリオキシム錯体、水銀(II)、鉛(II)銀(I)及びカドミウム(II)のジチゾン錯体、コバルト(II)、ニッケル(II)、カドミウム(II)及び亜鉛(II)のPAN錯体を用いた。また、芳香族炭化水素として、ベンゼン核2,3,4個が直線型に縮合したナフタレン、アントラセン及びナフタセンを用いた。本研究で開発した濃縮法の機構について検討した。有機溶媒蒸気によって飽和された水溶液中でテフロンテープの表面が有機溶媒の薄い液層によって皮膜される。水溶液中の疎水性溶質は、この皮膜層に抽出される。モデル実験によって皮膜層の厚みを推定したところ10μmであった。 2.シクロデキストリンは環状構造をしたオリゴ糖であり、環の内側は疎水的環境にあり、種々の疎水性溶質をその内側に取り込み、水溶液中で包接体を形成する。この性質を利用して、種々の炭化水素を水溶液から濃縮・分離することに成功した。さらに、包接体の組成を決定した。
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