研究概要 |
液体を2段階の相転移を経て、その断片としての情報を保った「クラスタ-」に変換する技術をほぼ完成した。これは、80℃から150℃にした様々の水溶液を小径のノズルからジェトとして噴出し、最初の断熱膨張によって小液滴群と自由分子群とに分離し、この液滴流を更に高真空領域に導入し、過熱状態とする。ここでは内部エネルギ-が表面張力よりも大きく、一気に爆発膨張を起し、液体中で強く会合していたものはクラスタ-として、比較的自由に動きまわっていた分子は、ガス分子として膨張拡散してしまう。この時、ガス分子に比べて質量の大きなクラスタはもとの液滴がもっていたモ-メンタムを反映して、流れ方向にビ-ムとして取り出された。これを電子衝撃イオン化し、質量数2000までを測定可能とした。液体の情報がどのようにクラスタ-、スペクトルの中に反映されているかを調べるために、「水溶液中の疎水性水和と疎水性相互作用」を示す典型的な化合物である。メタノ-ル,エタノ-ル,プロパノ-ル,イソプロピルアルコ-ル,ブタノ-ル,タ-シャリ-ブチルアルコ-ルを溶質として選び、これらが、その大きさと形によって水和形態が異なり、低濃度領域でも疎水基どうしが直接接触したミセル状の溶質会合が、水分子がつくるシェルの中で起こることがわかった。これは、低濃度領域で、溶質の分子溶積が小さくなるという観測結果と一致した。更に、各溶質の水和自由エネルギ-変化と、質量スペクトルから求めた水和平衡定数の対数値が比例関係にあることが証明され、本法が水溶液中の会合状態を観測していることが証明された。更にこの会合状態が、各溶質の水への溶効度の違いもうまく説明することが明らかとなった。
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