研究概要 |
光合成遺伝子の発現制御系を解析するためには,突然変異体を用いた方法論が有効であると考えられる.分子遺伝学的解析に必要ないくつかの条件を満たしているシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を実験に供した. 1.光合成突然変異体の生育条件および赤色螢光による一次選抜法の確立 ブドウ糖あるいはショ糖を含む寒天培地(Gamborg B5)を用い,3ー(3,4ーdichlorophenyl)ー1,1ーdimethylurea(DCMU)により光合成電子伝達系を阻害したA.thalianaが生育することを見いだした.これら光成成活性低下植物体は,長波長紫外線照射により強い赤色螢光を発した. 2.レポ-タ-遺伝子および自殺遺伝子のA.thalianaへの導入と変異原処理 光合成遺伝子発現の制御遺伝子の突然変異体を効率よく選抜するために,A.thalianaの変異原処理に先立ち,レポ-タ-遺伝子のA.thalianaへの導入を試みた.光合成遺伝子としてリブロ-ス1,5ー二リン酸カルボキシラ-ゼ/オキシゲナ-ゼ(RuBisCO)遺伝子(rbcS)およびクロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子(cab)に着目した.A.thaliana(Columbia)の葉DNAを鋳型として,校正活性を有する高温安定性DNAポリメラ-ゼを用い,rbcSー3Bおよびcablのプロモ-タ-とその上流を含むDNA断片およびアルコ-ル脱水素酵素(ADH)遺伝子をDNAポリメラ-ゼ増幅法(PCR)により調製した.これらrbcSー3Bおよびcablのプロモ-タ-DNA断片の下流にレポ-タ-遺伝子としてβーglucuronidase(GUS)あるいはchloramphenicol acetyltransferase(CAT)遺伝子を,また自殺遺伝子としてのADH遺伝子を置き,A.thalianaへの導入を試みた.一方,シロイヌナズナ種子を突然変異原ethylmethanesulfonate(EMS)により処理し,突然変異の選抜を開始した.
|