研究概要 |
(1)国内(小笠原,四国,近畿,本州中部)および国外(ハワイ,フィンランド,スエーデン,ドイツ)より採集した地衣類を加えて、約150株の培養組織を誘導した。 (2)培養組織より地衣体の再形成を試み、形態形成の条件を調べた。有効な条件は貧栄養(2-3%の寒天培地)、温度条件(15℃-18℃)、照度(2000ルックス明暗周期)である。 (3)チチレツメゴケについて、in vitroでの地衣体形成を形態的に調べた。 (4)12種のツメゴケ属について培養組織の誘導を試み、そのうち6種について天然と類似の地衣体の形態形成を見た。ことにヒロハツメゴケでは天然ではあまり見られていない藍藻形態型、ならびに緑藻型とのキメラ様地衣体をin vitroで得た。 (5)ツメゴケ属では培養地衣体は天然地衣体と同様なデプシド類、トリチルペン類を含有していた。Usnea hirtaでは地衣体の形成に伴ってウスニン酸含量の増加を見た。またイソウスニン酸、アトラノリンも検出した。これらの微量の地衣成分の同定と定量には、高速液体クロマトグラフィーが有効であった。 (6)培養組織より地衣構成菌と共生藻を分離し、地衣菌のプロトプラストの誘導、チトクロームの研究をはじめ他の研究者への材料提供を実施した。生きた生物としての地衣の活用をはかり、実験生物学への仲間入りを果たした。 (7)培養によって得たUsnea hirtaの構成菌は単独で地衣体様の構造を示した。 (8)培養知見からは地衣類は、菌類を主とした特殊な生態系であるとの考えを深くした。
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