研究概要 |
アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵抽出液は外来性の2本鎖DNAを鋳型として授精卵と同様のDNA複製をすることが以前より知られていたので、本研究では、まず、このカエルの卵無細胞系を利用してカエルの胚発生期のDNA複製について、特に、複製開始部位について検討した。その結果、この系では外から加えるDNAの種類や同一DNAでもその制限酵素で切ったDNA断片によってDNA複製効率の違いがあることを見いした。また、DNA複製効率の悪いDNA(M13RFDNA等)に効率の良いDNA断片(ラムダDNAのHind IIIの2.3kb断片等)を挿入した組み換えDNAでは挿入したDNA断片をもとに高効率にDNA複製が行われることを見いだした。このことにより、このDNA複製系では特定のDNA塩基配列が複製開始部位として働くことが示唆された。さらに、複製効率の良いDNA(phaiX174 RF DNA等)の制限酵素で切ったDNA断片のDNA複製効率を調べた結果、複製開始部位は数キロ塩基長に1個程度の頻度で染色体DNA上に存在することを見いだし、5ー6塩基長の特定塩基配列が複製開始に必須であることを示唆した。 一方、この無細胞系におけるDNA複製開始に必須な蛋白質(複製開始蛋白質)をphaiX174 RF DNAポリメラ-ゼ,DNAヘリカ-ゼ等より構成されたDNA合成再構成系を用いて検索した。その結果、分子量約6万のある蛋白質が複製開始蛋白質であることが示唆された。また、この蛋白質を用いたDNA合成再構成系では上記無細胞系と同様の鋳型特異性を持つことが判明した。これらのことから、この蛋白質が胚発生期のDNA複製の特性(高頻度で存在する複製開始部位)を決めている可能性を示唆さた。 以上のことから、複製開始蛋白質が複製開始部位をきめている可能性が示唆されたが、今後、この蛋白質の発生時での量的、質的変動を解析することによって胚発生での複製DNA開始部位を介したDNA複製の制御がより明解に解明されると期待される。
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