研究概要 |
正常ヒト繊維芽細胞を培養皿にフタ無しの状態で培養すると、細胞の増殖が著しく減少すること、また二つに仕切られたシャ-レの片方で細胞を培養し、もう一方に牛胎児血清を入れておくと細胞の増殖が有意に高まることを見出した。この現象は細胞あるいは血清由来の揮発性細胞増殖因子の存在を示唆している。以上のことから二の因子の単離同定を試みた。 牛胎児血清を凍結乾燥させその蒸気部分を二重トラップすなわちー40℃のエンタノ-ルトラップによる水の回収とー195.8℃の液体窒素トラップによる残りの物質の回収により凝固集収した。その結果液体窒素トラップ中に小量の強い臭いのある画分が得られた。 この画分は液体クロマトグラフィ-では吸着が強く溶出が不能であった。ガスクロマトグラフィ-ではTENAXーTAやキャピラリ-カラムを用いた場合に分離が可能であった。そこでTENAXーTAカラムを用いたガスクロマトグラフィ-・マススペクトロメトリ-(GCーMS)によって分離同定を試みた。その結果エタノ-ル,アセトン,アンモニア,シクロヘキサノ-ルが既知物質として同定されその他数種類の物質が認められたが未同定のまゝである。 同定された4種類の物質には増殖促進効果は認められなかった。しかしながらシクロヘキサノ-ルや飲酒によらないエタノ-ルが血中に存在する亊実は興味深くこれらの生理的意義は検討するに値いすると思われる。 現在、未同定の物質について更にGCーMSやMSーMSによる同定を試みている。
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